月曜日は、毎週、物理のたとえ話を紹介します。
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ある日曜日、A君はメルマガで勧められた地震グッズを買いに、近くのホームセンターへ行きました。
すると、レジの近くにこんな商品が置いてあるのを見かけ、目を疑いました。
「単原子分子理想気体 1袋 498円(税込)」
理想気体が実在する?
A君の頭はすっかり混乱してしまいました。
確か、理想気体の反対語は、実在気体だったはずです。
それが存在し、なおかつ、498円ぽっちで売っているなんて。。。
A君は、気になって、一袋だけ買って帰りました。
帰宅後、早速、実験です。
体積の変化しない容器の中にその気体を入れました。
まずは、圧力、体積、温度を測定し、状態方程式を用いて、モル数 n を求めました。
次に、外から熱を加えて温度を上昇させました。
もし、これが本当に、「単原子分子理想気体」であるならば、
Q=n Cv ΔT
Q:外から加えた熱
n:モル数
Cv:定積モル比熱
ΔT:温度変化
の式から求まる「定積モル比熱Cv」の値が
1.5R
になるはずなんです。
ところが、買ってきた気体は、Cv=2.0Rでした。
「やっぱり単原子分子理想気体じゃないよな」
A君はそういいながら、せっかく測定したので、「Cv=2.0R」と、
その袋に油性ペンで書いて、押入れにしまっておきました。
そのホームセンターでは、毎月、5のつく日には、レジの脇で「理想気体」を販売していました。
A君は、そのたびに、「理想気体」を買ってきては、定積モル比熱Cvの値を測定し、
油性ペンでその数値を袋に書いて、押入れにしまっておきました。
1年後には、押入れは、「理想気体」で一杯になりました。
年末の大掃除のときに、A君は理想気体を整理することにしました。
Cvの値が同じ気体が複数ある場合は、一つを残して、残りを捨てました。
Cvの値は、2.0R 2.1R 2.2R と続き、2.3Rがとんで、あとは、2.4R, 2,5R ,…と4.0Rまでそろっています。
A君は、どうしてもCv=2.3Rの気体が欲しくなりました。
これがあれば、きれいにそろうからです。
A君は、町のタウン誌の「譲ってください」のコーナーに投稿することにしました。
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「Cv=2.3Rの理想気体」を格安で。手渡し希望
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3人から電話があり、A君は結局、1000円でその気体を手に入れることができました。
A君は、その気体が入った袋を手に取りながら、部屋の中でつぶやきました。
「ずっと、Cv=2.3R のやつが欲しかったんだよ。」
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★たとえ話終了★
このたとえで伝えたかったのは何かと言うと、
定積モル比熱というのは、気体についた名前のようなものだと言うこと
なんです。
その気体の特性を示す数値だと言うことなんです。
その文脈が、たとえ話を通じて伝わっていたらうれしいんですけど、いかがでしたか。
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【物理たとえ話19】理想気体がホームセンターに?
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