Quantcast
Channel: 究極の物理勉強法~たとえ話と微積分で高校物理が楽しくなる
Viewing all articles
Browse latest Browse all 834

【物理たとえ話02】ある遺跡の暗号

$
0
0

月曜日は、毎週、物理のたとえ話を紹介します。

■物理が必要なのはなぜ?  それは、人間がバカだからだ!

ついつい忘れがちですが、人間は、大自然の中で生きている動物の中の一つの種です。

動物は、生きていくために、自分を取り巻く環境から情報を収集し、その情報から、未来を予測し、その予測に基づいて行動しています。

動物の一員である人間だって同じです。

 〇もっとたくさんの情報を自然から収集したい!
 〇収集した情報から、もっと正確に未来を予測したい!
 〇その予測に基づいて、もっと適切な行動をしたい!

この3つを完璧にしたい!という欲求にしたがって、能力を伸ばしてきたのです。

物理を含め、サイエンスは、この延長線上にあります。

でも、この欲求は完全に満たされることはあるのでしょうか?


無理ですね。


考えてみましょう。

自然(宇宙)は、無限と見なせるな存在です。

それを理解しようと思っている自分を見てください。

たかだか数兆個の脳細胞によってできているタンパク質機械である脳を使って考えている存在です。

直径20センチメートルかそこらの大きさしかありません。
あまりに差がありますね。


だから、無理なんです。


でも、無理でも何でも、動物としての自分は、環境から情報収集して、それなりの予測を立てて、今すぐに行動しなくてはならないのです。

だから、無理を承知で、さまざまな工夫をして、よりまともな予測を立てようとします。

その工夫こそが、物理のはじまりです。

今回は、物理が行っている工夫のうち「規則性を見抜いて法則化する」ことの意味をたとえ話を使って説明したいと思います。

では、たとえ話モードへ突入!

■たとえ話(第2話)「ある遺跡の暗号」

ある大学の遺跡発掘チームが、エジプトに発掘に行きました。

チームリーダーの教授は、日本に残って、発掘隊に電話で指示を与えています。

発掘を初めて3日後に、発掘チームは遺跡を発見しました。
その遺跡には、

1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

というような数字が延々と並んでいます。

どこまで数字が続いているかは、まだ、確認できていません。

本当にたくさんの数列が、ずーと遠くまで書いてあるんです。

発掘隊員のAさんが、教授へ電話しました。

A 「教授!遺跡には数字が書いてあります!」
教授「どんな数字が書いてあるんだ?」

A 「はい。それは、1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,‥‥‥‥‥‥‥‥
Aさんの電話は、その後、30年間続きましたが、まだ終わりません。

電話をかけ始めたときは、20歳だったAさんも、いまでは、50歳です。

教授は90歳になりました。この30年間、二人がしていたことは電話だけです。

こんなのは、嫌ですね。

そこで、発掘隊員のBさんが、教授へ電話しました。

B 「教授!遺跡には数字が書いてあります!」
教授「どんな数字が書いてあるんだ?」

B 「はい、たぶん、1から始まる奇数列です。」
教授「確認したのか?」

B 「いいえ、これから確認に行きます。確認できたら電話します。」
Bさんは、数列が奇数かどうかを確認する旅に出ました。

30年経ちましたが、まだ、旅は終わりません。
旅に出たときは20歳だったBさんも、今では50歳です。

そのBさんに、90歳の教授が電話しました。

教授「B君!もういいから帰っておいで。私も、たぶん、奇数だと思うよ。少なくとも30年間調べつづけた範囲では、『奇数』と見なしても問題ないことが分かっただけでもよかったよ。分かったという結論を出すためには、どこかであきらめなくてはならないのだね。それが、やっと分かったよ。」

-------------------------------------------------------------------------

このたとえ話で伝えたかったことは、こういうことです。

無限の存在に対して「分かった!」と思うためには、規則性を見抜く以外に方法は無いのです。

Aさんのように、そのまま理解しようと思っても無理です。人生のすべてを捧げてしまうことになります。

ですから、Bさんが「1から続く奇数です」と見抜いたようにしなければなりません。

でも、その規則は、常に間違っているかもしれない危険性にさらされています。

1億個目の数が偶数かもしれないのです。それは、見に行ってみなければ分かりま
せん。

では、どうするか?

「とりあえず奇数でいいや!」とあきらめるのです。

このあきらめの上に「分かった!」という感覚があるのです。

物理の法則は、実験データに現れた規則性を見抜いて、数式にまとめたものです。

でも、これは、Bさんと同じ危険性を含んだ法則です。

より詳しいデータが得られたときには、その規則性は破られるかもしれないのです。

でも、「この範囲では、とりあえず成り立っているからいいや!」というあきらめのもとで、法則に基づいた理解が成り立っています。

何はともあれ、このようにして、無限の自然を、とりあえずの規則性を見つけることによって、脳に入るような形(法則)に変換しました。

物理は、このようにして得た法則を使って自然を理解していきます。

この法則をどのように使って理解するかは、第3号でお話します。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 834

Trending Articles