予備校講師になって、受験生から、
「模試の成績が安定しません!」
という相談をよく受けました。
原因ははっきりしています。
受験生は、普通、得意分野と苦手分野を持っています。
模擬試験が、1科目6時間くらいの試験で全分野から満遍なく出題するテストであれば、模試の成績はそれほど上下しません。
ところが、物理を例に挙げれば、3,4問しか出題されないわけです。
だから、得意分野が出題されれば点数は上がり、苦手分野が出題されれば点数は下がるわけです。
受験に向かっていた僕は、まさにその状態でした。
ようやく上昇の兆しが生まれ、得意分野から出題されれば、難関大の問題でも得点できるようになっていたものの、苦手分野が出れば、簡単にひねられてしまう・・・。
野球のバッターにたとえれば、
真ん中低めのストレートはくればホームランにできるが、それ以外のコースだと凡退してしまう打率2割1分のバッター。
そんな感じだったと思います。
物理の得意分野は「単振動」
どんな問題でも単振動なら解ける自信がありました。
早稲田大学の試験に向かい、物理のテストがスタートしたとき、最初に僕の目に入ったのは、天井から吊り下げられたばねにかごが取り付けられている図。
そして、かごにはリンゴが5つ入れられていて、床にはそれを物欲しげに眺めるサルが。
「お!来た!単振動だ」
心の中で「しめた!」と思いました。
次の図では、カゴに飛びついて一緒にびよーんびよーんと振動しているサル。
そして、最後の図では、2つのりんごを手に持って床に飛び降り、満足げに微笑んでいるサル。
20年以上たった今でも、そのサルの微笑が脳裏に焼きついています。
それだけ、単振動が出題されたのがうれしかったのだと思います。
予備校講師の立場から見ても、振動中心が2回切り替わる単振動ですから、難易度はかなり高いです。でも、当時の僕は単振動なら絶対の自信を持って解くことができました。
15分くらいでその問題を完答し、次の問題に進みました。
他の問題がどんな問題だったか覚えていませんが、最初の問題が短時間で完答できたことによって、余裕を持って取り組むことができたので、きっとよい結果だったのだと思います。
2割1分のバッターが、第1打席でホームランを打ったようなものです。
まさに、「ツボ」にはまったという感じでした。
続いて数学。
第1問は、微分方程式。
当時は、微分方程式が高校数学の範囲に入っていました。
しかも、それが、単振動型の微分方程式でした。
「単振動だ!」
5分で解き終えて1問完答をキープ。
時間的にも精神的にも大きな余裕ができました。
数学は、これまでにないよい出来だったと思います。
2割1分のバッターが、2打席連続ホームランを打ったようなものでした。
早稲田大学理工学部応用物理学科の偏差値は、当時、物理学科についで私立では2番目に高いところでした。
当時の僕の実力では、10回受験して1回合格点が取れるかどうかだったと思います。
その1回が、受験本番にやってきた・・・そういう幸運がありました。
合格でした。
大学生になれることは確定しました。
泣いても笑っても、受験勉強はあとわずかです。
京都大学の受験に向けて、最後の1秒までベストを尽くしてやり通そうと思いました。
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