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【物理たとえ話07】理想的水平面でのカーリング

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月曜日は、毎週、物理のたとえ話を紹介します。


■力とは「物体の運動を等速直線運動からそれさせるもの」
───────────────────────────────────

第6号では、アリアリ君とガリガリ君の話をしました。

そこでのポイントは、物理が対象にしているのは、「感覚で捉えた世界」ではなく、
その背後にある「理想化した世界」だということでした。

そして、その理想化した滑らかな水平面上の運動を思い浮かべて、
「力のはたらいていない物体の運動が、等速直線運動である。」ことを、
見抜いたのでしたね。

これが、
慣性の法則
です。

慣性の法則は、「力の本質」を、半分表しています。

力が働いていない物体の運動は、等速直線運動なのだから、
力が働くと、物体の運動はどうなりますか?

等速直線運動からそれますね。

では、力とは何か?

力とは、「物体の運動を、等速直線運動からそれさせるもの」です。

では、どのようにそれさせていくのか?

それは、慣性の法則には表されていません。

だから、半分なのです。

どのようにそれさせていくのかを表す規則が運動方程式です。

今日のたとえ話は、運動方程式についてです。

では、たとえ話モードへ突入!


~~ たとえ話「理想的水平面でのカーリング」 ~~


物理の授業で「限りなく滑らかな水平面」について習ったので、A君とB君は、
その理想的な水平面でできたリンクの上で、カーリングをすることにしました。

交互にストーンを滑らせて、円の中に静止させることができたら得点になります。

ところが、理想的な水平面には摩擦力が働かないので、
ストーンは等速直線運動をしてしまい、絶対に静止しません。

そこで、ゲームのルールを変えることにしました。

新しいルールは次のようなものです。

まず、リンクの右端から一人がストーンを滑らせます。

もう一人がリンクの中央付近で力を加えて、速度の大きさを変化させます。

ストーンがリンクの左端に到達するまでにかかった時間が10秒間に近いほど、
中央で力を加えた人の得点が高くなります。

得点が高いほうが勝ちです。

2種類の異なる質量のストーンを用意して、ゲームを始めました。

1つのストーンは5kg、もうひとつは1トンあります。これらのストーンは、
外見はまったく同じで、見ただけでは区別がつきません。

まずは、A君が投げる番です。

A君は、5kgのストーンを選び、ゆっくりと滑らせました。

B君は、リンクの中央でじりじりしながら、ストーンがやってくるのを待っています。

6秒後に中央付近に到達しました。

B君は、残り4秒で到達できるように、強い力を1秒間加えました。

ストーンは加速され、A君が投げてから9秒後にリンクの左端に到着しました。

力の大きさや、加えた時間の長さが少し大きすぎたのです。

次はB君が投げる番です。

B君は1トンのストーンを選びました。A君は5kgのストーンだと思っています。

B君は、このストーンに先ほどA君が投げたのと同じ速度を与え、滑らせました。

A君は、「B君はすこし強すぎたんだよなぁ」と言いながら、
B君よりも、少し弱い力を1秒間加えました。

ところが、ストーンはA君の力の影響をほとんど受けず、ほぼ、等速直線運動をして、
11.99秒後に、リンクの左端につきました。

10秒に近かったB君が勝ちました。

2人は、1トンのストーンを片付けながら、今回のゲームについて話しました。

B:「今回のゲームで、力と質量が速度変化に与える影響が、イメージできるようになったね。」

A:「そうだね。力を強く加えるほど、速度が大きく変化するんだよね。」

B:「あと、質量が大きいほど、速度が変化しにくいんだよね。」

A:「そうだよ。1トンのストーンに力を加えても、速度がぜんぜん変わらないから、おどろいたもの。」

B:「でも、あのとき、あのまま力を加え続けたらよかったんだよ。」

A:「2秒間、力を加えたら速度は2倍変化したって言いたいんだね」

B:「ただ、それでも、僕の勝ちには変わらないんだけどね。」

A:「じゃあ、言うなよ。」


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このメルマガで、初めて数式を使ってみます。難しくないから、がんばってついてきてくださいね。

ここで、運動方程式のイメージがつかめたら、一生ものの財産ですよ。

ゆっくりとした速度vで滑ってきたストーンに力Fを、
Δt秒間加えたら、速度が増加して、Vになったとしましょう。

ストーンの質量は、Mとします。

図は、こんな感じです。

→ v       ―→ V
  ○→F       ○→F
  時刻 0 時刻 Δt

等速直線運動からのそれの度合いである速度変化をΔVとしますね。

その速度変化が、FやMやΔtとどのような関係にあるか考えてみましょう。

力Fが大きいほど、速度は大きく変化するので、ΔVはFに比例します。

時間Δtが大きいほど、速度は大きく変化するので、ΔVはΔtに比例します。

質量Mが大きいほど、速度の変化は小さくなるので、ΔVはMに反比例します。

よって、このようになります。

ΔV=V-v=(F Δt)/M

両辺にMをかけて、両辺をΔtで割ると、

M(ΔV/Δt)=F

ここで、ΔV/Δtは、単位時間あたりの速度の変化=加速度 という量です。

これを、aとおくと、

Ma=F

という式になります。これが、
力学の原理である運動方程式
です。

これまで、何度も登場してきたものですね。

すべての力学現象は、この式だけから説明していきます。

強調してもしきれないほど大切な式ですね。

この式が、「先割れスプーン」です!
 創刊号参照→ http://rikasougou.com/soukan.html
全ての力学の問題をこの式から解くんです!
第3号参照→ http://rikasougou.com/BN004.html


次に、この式の読み方を教えますね。

まず、右辺の力Fを手で隠します。

 Ma=(手)

Fは見えなくなりましたね。このまま、しゃべりつづけます。

「力が働かないときは、速度の変化率である加速度aはゼロ

つまり、物体は、等速直線運動する。」

はい、慣性の法則が見えました。

次に、手を離します。

Ma=F

そして、こう言います。

「力Fが加わると、物体の運動は等速直線運動からそれて、変化する。

 質量Mは、速度の変化のしにくさ。重さじゃないよ。」


これが、運動方程式のイメージです。

間違っても、「Maという力がある。」

なんて、読まないでくださいね。


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