そもそも9月から全く予備校での実績がない新人講師に「物理演習」という新しい講座を持たせた背景はなんだったのか。
当時、物理を担当していた講師の方は、
「大学入試は教科書から出題されるのだから、教科書を完璧に理解すれば大丈夫だ」
をポリシーにして講義をしていました。
予備校に入学後、全員に新たに教科書を購入させ、それを徹底して勉強させるという方法に、一部の生徒が、
「せっかく予備校に入ったのだから、高校とは違うことを教えて欲しい」
と反発し、授業に出席しなくなる事態に発展していました。
予備校の経営サイドは、来年度に向けて新しい物理講師を探すことをすでに決めていたようです。
そこに、「高校のやり方とは違ったやり方で教えたい」という僕が、ちょうどよいタイミングで現れたので、
「来週からやってみて!」
ということになったのです。
はっきり言って、この半年は「お試し期間」でした。
予備校側としては、この新人が使えそうなら来年度担当させるが、使えなさそうなら、他から実績のある物理講師を連れてくれば良いだけです。
僕に与えられた時間はたった半年。
そこで、はっきりした成果を出さなければ、来年度は、別の物理講師が他から呼ばれてくるでしょう。
この予備校には、物理講師は一人いれば十分なのです。
予備校という世界は、成果が出なければ簡単に契約が打ち切られる世界なのだということを、最初から目の当たりにすることになりました。
厳しい世界だなと思いました。
しかし、僕ができることは、よい授業をして、生徒の成績を上げることだけです。
20人ほどの生徒が僕の「物理演習」を受けることになり、9月からスタートしました。
授業をするのは、生まれてはじめて物理を教えるのにもかかわらず、成果を出さなければ物理の予備校講師としてやっていけないという崖っぷちに立っていた僕。
授業を受けるのは、残り6ヶ月で、物理を根本からやり直さなくてはならない20人の生徒。
どちらも崖っぷちです。
講師にも生徒にも大きな危機感が漂っていました。
入試まで残すは6ヶ月。物理を教えるのは生まれて初めてでしたが、そんなことは言っていられません。
僕の両肩には大きな責任がずっしりとのしかかっていました。
でも、なんとかする以外、道はありません。
ここでがんばらなくては、本当に人生が終わってしまうような気がしました。
「この20人の成績を上げるために、できることは何でもしよう。」
そう決意しました。
こうして、予備校講師1年目がスタートしたのです。
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最初から崖っぷちだった予備校講師1年目
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